Supercellプロジェクトは、世界最高のインラインスケートフレームを作ることを目指して始まりました。Bontには、カーボンファイバーの積層と樹脂に関する豊富な知識があります。積層とは、繊維を重ね、樹脂を塗って構造を作ることです。長年にわたり、織り方や重量の異なる繊維を使い、カーボンの層の間に別の素材を挟んだり、樹脂を変えたりして試験してきました。試作のたびに、構造体を破壊する試験機にかけ、積層の強度を測定します。これまでに数千回の試験を行いました。その中ではっきりしたのは、カーボンは曲面を生かすと強くなるということです。平らに積層すると、たわみやすくなります。そのため、新しいフレームには曲面の側壁が必要だと、最初から分かっていました。
このレーシングフレームでは、まず工学的に優れた設計を追求することにしました。
Bontがカーボン製インラインフレーム市場へ参入したのは、比較的遅い時期でした。2008〜2015年は、サイクリングシューズがオリンピックやツール・ド・フランスなどで勝利を支え、その部門の仕事に追われていました。他社がカーボンフレームを発売する中、Bontには開発に取り組む時間がありませんでした。インラインフレームの売上が減るのを見るのはつらいことでしたが、振り返ると、他社の失敗から学べたという利点もありました。
Solid Worksで設計したSupercellインラインフレーム
他社製品との比較
市場の他社製フレームを見ると、カーボンファイバーの生かし方を十分に理解していないか、できるだけ軽く強い構造より、見た目を優先した設計だと感じました。Bontは常に、外観より機能を重視します。最終目標は、最速のスケートを作ることだからです。このレーシングフレームでも、まず工学的に優れた設計を追求しました。結果として、最も強い設計は見た目もよいものになりました。ただし、仮に外観が魅力的でなくても、他社製品より機能が優れていれば、その設計を選びます。機能を第一に、外観を第二に考える。それがBontです。
コンセプト
Inze Bontは、並外れた設計者です。カーボンフレームの構想を伝えると、一時間もたたないうちに、木の塊からフレームの模型を削り出しました。強いフレームを作る原理を、深く理解しているのです。四つのウィールと、ブーツの二つの取り付け部を、最も強く効率的につなぐことが重要です。そこに側壁の曲面を加えると、この形が生まれる理由が分かります。
Supercellインラインフレームの最初の木製試作模型
曲面の側壁
できる限り強いフレームを作る鍵は、側壁を曲面にすることです。ただし、曲面の側壁を持つカーボンフレームを金型で作るのは簡単ではありません。この形は、どの方向にもそのまま引き抜けないためです。Supercell用の成形型の開発は、非常に困難でした。曲がりやゆがみを生じさせず、まっすぐな状態でフレームを取り出せるよう、型を多くの部品で構成しています。
Supercellインラインフレームの強さを支える曲面の側壁
他社製品との比較、その2
他社製品の強度と重量の関係を調べるため、CADソフトのSolid Worksでフレームを再現し、応力試験を行いました。Supercellの設計初期から、優位性を確認できました。他社は型から取り出しやすい平らな側壁を採用していたため、Bontには強度を大きく高める余地がありました。こうして、世界最高の強度重量比を持つインラインフレームを目指して開発が進みました。
Supercellインラインフレームの応力試験
ナノ「Supercell」樹脂
Bont Supercellの名前は、カーボンファイバーを結合するカーボンナノチューブ配合樹脂に由来します。カーボンナノチューブは、炭素原子一個分の厚さを持ち、六角形に並んだ炭素原子が筒状になったものです。この樹脂は、もともと強いカーボン複合材の靭性を大きく高め、剛性を損なわず、場合によっては剛性も高めます。樹脂にナノチューブを加えると、表面の耐摩耗性が向上し、樹脂より強い繊維へ力を伝える助けにもなります。Supercellフレームには、このナノ構造を利用しています。
Supercellインラインフレームのメッシュ構造
まとめ
このプロジェクトに注いだ努力が実を結び、とても満足しています。設計と試験に二年をかけて、この製品が生まれました。Bont Supercellで滑る機会があれば、その製作の背景と、独特の形を採用した理由も思い出していただければと思います。

Bont Supercell 4 x 110mmインラインフレーム
著者について:
Alexander Bontは2歳からスケートを始め、ショートトラックのオーストラリア代表チームに7年間所属しました。クワッドローラースケート、ロングトラック、インラインスピードスケートの競技経験もあります。ショートトラックの国内記録を含む数々のオーストラリア国内タイトルや、インラインスピードスケートの州タイトルを獲得しています。Bont Skatesのオーナー兼CEOです。
Solid Worksで設計したSupercellインラインフレーム
Supercellインラインフレームの最初の木製試作模型
Supercellインラインフレームの強さを支える曲面の側壁
Supercellインラインフレームの応力試験
Supercellインラインフレームのメッシュ構造